個人事業主として事業を始める際に重要となるのが「開業届」の提出です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、事業開始を税務署に届け出るための書類です。この記事では、開業届の提出方法と必要性について詳しく解説します。
開業届とは
開業届は、個人事業主が事業を開始したことを税務署に知らせるための書類です。新たに事業を開始した場合や不動産所得、山林所得などを得る事業を開始した場合、また事業用の事務所や事業所を新設・増設・移転した場合に提出が必要となります。
所得税法により、事業を開始した日から1ヶ月以内に提出することが義務付けられています。ただし、提出が遅れたり提出しなかったりしても罰則はありません。
開業届の提出方法
開業届の提出方法は主に3つあります:
1. 電子申請(e-Tax)での提出
国税庁が提供しているe-Taxを利用して、オンラインで開業届を作成・提出する方法です。この方法では以下の準備が必要です:
- パソコンやインターネット環境
- マイナンバーカード
- ICカードリーダライタ(マイナンバーカード読取用)
- e-Taxソフトのインストール
e-Taxで申請する場合は、16桁の利用者識別番号が必要です。税務署の窓口またはオンラインで「電子申告・納税等開始(変更等)届出書」を提出することで取得できます。
2. 税務署への直接持参
開業届の用紙を記入し、所轄の税務署に直接持参する方法です。この場合、その場で受付印を押した控えを返却してもらえます。
3. 郵送での提出
記入した開業届を所轄の税務署に郵送する方法です。郵送の場合は、控えを返信してもらうために切手を貼った返信用封筒を同封する必要があります。
開業届提出に必要な書類
開業届の提出には以下の書類が必要です:
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書):国税庁のWebページからダウンロードするか、税務署窓口で入手できます
- 本人確認書類:
- マイナンバーカードを持っている場合:マイナンバーカードのみ
- マイナンバーカードを持っていない場合:個人番号通知カードまたは個人番号を記載した住民票、および運転免許証やパスポートなどの身分証明書
- 個人番号(マイナンバー)がわかるもの
また、内容に訂正がある場合には印鑑(シャチハタ以外)が必要です。
開業届を提出するメリット
1. 青色申告の特典を受けられる
開業届を提出した上で、所得税の青色申告承認申請書を提出することで、青色申告が可能になります。青色申告では最大65万円の控除が受けられるなど、税制上の大きなメリットがあります。
2. 社会的信用が向上する
融資の審査やクレジットカードの申し込み、賃貸オフィスの契約時など、開業届の控えを求められるケースがあります。開業届を提出していれば、個人事業主として事業を行っていると証明でき、社会的信用が高まります。
3. 屋号を名義とした事業用口座の開設
開業届を提出することで、屋号を名義とした事業用の銀行口座を開設できるようになります。これにより、プライベートと事業の資金を明確に区別することができます。
4. 補助金申請の際に必要
各種補助金や助成金の申請時に、開業届の控えが必要となるケースが多くあります。開業届を提出していないと、これらの支援を受けられない可能性があります。
5. 小規模企業共済への加入
個人事業主の退職金制度である小規模企業共済に加入するためには、開業届の提出が必要です。
開業届を提出する際の注意点
1. 失業保険が受けられなくなる可能性
会社員から自営業者に変わった場合、事業開始のタイミングによっては失業給付が受けられなくなる可能性があります。失業給付を受ける予定がある場合は、ハローワークに相談することをおすすめします。
2. 扶養から外れる可能性
開業届の提出自体で扶養から外れることはありませんが、所得が増加すれば扶養から外れる可能性があります。配偶者の扶養に入っている場合は、収入バランスに注意が必要です。
3. 記帳の義務が発生
開業届を提出すると、事業に関する記帳の義務が発生します。収入や経費を正確に記録し、確定申告を行う必要があります。
まとめ
開業届は個人事業主として事業を始める際に提出が義務付けられている重要な書類です。提出しなくても罰則はありませんが、青色申告の特典や社会的信用の向上など、多くのメリットがあります。
事業を開始した日から1ヶ月以内に、e-Tax、直接持参、または郵送で所轄の税務署に提出しましょう。提出の際には、本人確認書類やマイナンバーが必要です。
開業届の提出は個人事業主としての第一歩です。適切に手続きを行い、事業を円滑に進めていきましょう。

